並べる

ふと気づけば、オシメ様のおもちゃは「散らばる」モノばかり。部屋の掃除は、それら散らばったおもちゃを拾い集めて回ることから始まる(そして拾い集めるなり、また散らばる)。もともとオシメ様は、こちらの非常な警戒をよそにモノを口に入れることがほとんどない赤ん坊だった。他の子がガラガラやらぬいぐるみやらをよだれでベタベタにしていても、オシメ様はぶんぶん振り回すくらいが関の山。幸いにも「誤飲事故」ということからは無縁でこれまで過ごしてきた。
ブロック、積み木に始まり、実家でじじの碁石をばらまいて遊ぶことを覚えた。そして、おはじき、パズルのピース、クリップへ展開。細かさと散らばり具合もぐんとパワーアップ。そこに更に、木のビーズ(直径1センチ)が加わり、週末にオトノ様と公園でどんぐりを大量に拾ってきた。さすがにくらくらする(いつか、どんぐりから虫がわいてくると思うとますますくらくらする)。
おはじきやどんぐりは、ままごとセットのお鍋に入れてかちゃかちゃかき回し「ごはん!」になる。でも、オシメ様の興味はもっぱら「並べる」ことにある。リビングの床一面に、おはじきを丸ともオバケともつかない形にぐるりと並べ、どんぐりはままごとお鍋の上に、ケーキのろうそくのように立てて並べ、フローリングの目にそって、木のビーズを1列に並べ・・・。
洗面所で歯を磨いていたら、「お母ちゃん、見て〜!」とオシメ様のご機嫌な声がする。「なにー?」と洗面所からリビングへ入った私の目に飛び込んできたのは、置き畳のヘリに合わせてびっちり並べられたトランプ。52枚は圧巻だった。思えば昔、テーブルの上に出しっぱなしにしていたスナップ写真やらレシート、ハガキなどを部屋の端から端まで並べたことがあったっけ。なんなんだろう、この「並べる」ことの醍醐味は。
そんなオシメ様、最近のお気に入り食材は「いくら」。ビーズやおはじきと同じく、やっぱりひとつぶひとつぶ大事そうにつまみ上げ、ご飯の上に並べている。