人ひとり、どれほどのスペースが必要なんだろう。
なんとなれば、パリ邸入居までのしばらくを暮らすマンスリーマンションは1K 27平米しかない。たった3週間とはいえ、オシメ様を含む3人がこの広さで暮らす。
どきどきしながら見に行ったその部屋は、でも、「狭い」という印象がない。ダブルベッドに2人用ダイニングテーブル、キッチン、バストイレこそユニットになっているが、かなり奥行きのあるクロゼットがふたつ。小さなテレビ、ライティングテーブル。これだけの家具があっても、ごちゃごちゃした感じはうけないのだ。
キッチンには、冷凍・冷蔵室が別になっている冷蔵庫、炊飯器、電子レンジにポット。フライパンと鍋がひとつずつ。しゃもじ・おたま・ビーター・菜ばしもある。ダイニングテーブル脇の小ぶりのサイドボードには、大中小の皿、茶碗、コーヒーカップとグラス、ナイフ・フォーク・スプーンがそれぞれ2つずつ。スタンドタイプの掃除機にクイックルワイパー、屋外ではあるけれど全自動洗濯機もある。さすがマンスリーマンション、ちょっと長期の滞在に、最低限必要なものは全て揃っている。大人であれば身一つで入っても特に困りはしないだろう。
ひるがえって我が家。この「仮住まい」の備品と何がどう違うのか。この「仮住まい」には何が足りないから「仮住まい」だというのか。「趣味のもの?」とオトノ様。パソコン、本や雑誌、DVDデッキ、オーディオ機器、おもちゃにアルバム・・・確かに仮住まいにはないものだが、淘汰することはできるだろう。「洋服も?」…でも、あのクロゼットがあれば収納可能。
きっと、私はこれだけのモノで暮らすことができる。あとは、例えば、こんな学校の給食室から持ってきたような食器じゃなくて、自分好みのモノにすればよいだけかもしれない。
悪魔に「歩いただけの土地をやる」と言われ、一日歩き続けた挙句力尽きた男は、きっちり自分の身長分だけのスペースに埋められた。「立って半畳、寝て一畳」究極の答えはロシアだろうが日本だろうが変わらない。