こぶしを上げろ

ダブルとプリキュアが終われば時刻は午前9時。まだ日曜日は始まったばかりだ。
「よぉし、まだ取り戻せるっ!」と叫んでこぶしを突き上げる。この休日を有意義なものにしなければ。
近所のスーパーでは手に入らない諸々を一気に調達するため、ちょっと遠出することに決定。とはいえ、すぐには出かけられない。朝食の食器洗いに洗濯、着替え、化粧、オシメさまの身支度、おもちゃを片付けて久々の掃除機。オトノ様をせきたてながら大急ぎで取り掛かっても、結局出かけられるのは10時半。観光地を周遊するかのような路線バスは交差点ごとに停まり、巨大イオンモールまで30分かかる。着いたとたんに「お腹すいたー」と声をあげるオシメ様。何の用事も済まさないまま、まずはレストランに直行する。
このままだと帰宅は14時、夕飯と作り置き惣菜の準備にかかるのは16時から。買い物でオシメ様を疲れさせ、帰宅と共に昼寝に持っていければ2時間ある。会社では落ち着いてできない仕事が3つ。朝4時に起きるつもりだったけどそれは無理。なんとか6時半に起きたものの、7時半からのスーパーヒーロータイムをオシメ様が逃すはずもなく。ぴったり5分前に起きてきた。貴重なワークタイムあっさり終了。私だってダブルは見たい。お昼寝アワーに賭けるのみ。
昔むかし少女の頃、こんなに時計の針を気にしたかしら? 日曜の朝に起きた時間も、大阪のデパートに行くために家を出た時間も、覚えてなんかない。梅田駅を取り囲んで立つ3つのデパートを何度も行き来しどれくらい時間をかけてお気に入りの一着を求め歩いたかなんて、意識したこともない。出かける前には自分の身支度だけすればよかった。帰ってきても買ってきた服や本を眺めていれば夕食は出てきたし、風呂が沸いた。明日の着替えもちゃんと洗濯されていた。自分のことだけやっていればよかった。だから時間なんかたっぷりあって、どれだけ使おうが気にも留めなかった。
今は時間が消えていく。どれだけ気をせかして動き回っても、油断をすればすぐ時計の針はいつのまにか、ほらもうあんなに進んでいる。そして体は動かない。オシメ様は目論見どおり帰りのタクシーで寝てくれた(タクシーでは10分かからなかった)。そして私もぐったり横になる・・・前に買ってきたものを冷蔵庫なり、なんなりに片付ける。そしてやっとこ横になる。ワークタイムなんてくそ食らえ。
会社にいれば仕事の時間が足りないから家でやらなくてはと思い、家にいれば家事の時間が足りないから仕事を休みたいと思う。何かの秤の針のように、右に触れ左に触れ、さだまらない。
そしてまた、こぶしを上げる。「まだ取り戻せるっ!」。