にゃ行の予感

保育園に着くと、玄関から見える図書室でオシメ様は腹ばいになって絵本を読んでもらっていた。私が来たのに気づくとすぐに、駆け寄ってきてダッコをせがむ。その様子が、なんとなくいつもとは違う気がして「今日は甘えんぼやね」と声をかける。先生が「今日は○○ちゃんのお迎えが早くて、その後から元気ないんですよ」と補足した。なるほど、いつも「最後のひとりちゃん」を争っている親友の○○ちゃんがいなくて、寂しかったのか。今日はJRが遅れていつもより遅くなったし、余計心細かったのかもしれない。納得しつつダッコして家路を急ぐ。
家に着いてからも、オシメ様はダッコダッコとまとわりつく。そりゃあ普段から甘えんぼで、ダッコダッコ言っている。いつもと同じではあるんだけれど、妙に何かが違う。なんだろなーと思っているうちに気がついた。しゃべる言葉に「にゃにぃにゅにぇにょ」が多いんだ。「あにょにぇ(あのね)」「ダッコしてにょ(してよ)」。そして口ではお腹が空いたと言うくせに、しっかり抱きついたまま離れない。今日は大好物のカレーなのに見向きもしない。しかしなぜこんなべちゃべちゃしたしゃべり方をする?
「ねぇ、何かイヤなことあったの?」と聞いてみた。「にゃいにょ(ないの)」「ふーん」。でもなんだか妙に気になって、言われるままにダッコしていた。しばらくしてようやくオシメ様が口を開く。「オシメちゃん、おなか痛いの」「いつから」「ほいくえんでおやつもらってから」。夕方のオヤツをもらってから痛かったわけだ。元気がなかったのは、○○ちゃんが先に帰ったからではなくて腹痛のせいだったのか。すぐに駆け寄ってきたときの切実な顔、その後の甘えぶり、妙なにゃ行。私の感じた違和感の原因はこれだったんだ。いつもと違うという直感が当たったことに、ちょっと気をよくしてしまう。これがハハの勘ってヤツですか。
特に熱っぽくもなく、下痢もしていない。早く寝かせよう。「おなか痛くならないように、アンパンマンつけて寝ようか」と言うと、いつもは嫌がる腹巻を素直につけた。そういえば、「おなかいたい」なんて訴えを聞くのは初めてだ。自分の体の不調をきちんと説明するできるようになったオシメ様。いよいよ幼児。角を曲がって、来年は幼児組だ。