「食堂」といってもうちの食堂はただの食事スペースで、テレビと電子レンジがあるだけの部屋。 お弁当やコンビニ等で買ってきたものを昼のニュースを見ながら食べる。利用するのは主にジョシ。
年明け早々「盲腸再発」と言って休んでいたアント本部長に大腸がんが見つかった。 病院は東京だし、年が明けてからテレビ会議でちょっとした業務引き継ぎの話したくらいしか顔を見てない。 だけど本部の私たちには、入院・手術のスケジュールなどの連絡を適宜メールしてくれるし、 FGLに酢醤油常務が勝手に進めてくれるから、仕事に支障もない。 私は何も困ってないし、アント本部長にこちらから連絡を入れて煩わせることもない。 アントさんは何も心配せずにゆっくり療養に勤しめばいい、それだけ思っていた。
このところずっと外食ばかりだったネッコさんが久しぶりにやって来た。すき家の牛丼を携えて。 私はこのようなとき、何を話したらいいのか適当な話題が見つからない。 「おや、久しぶりやん」と言ったきり言葉が続かないんだけど、そのあとはネッコさんがいろいろ話してくれる。
「アントさんに、ゾラ姉さんがお守りをあげたんです。FGLも酢醤油常務もそれぞれあげてたらしくって。」 ネッコさんが続ける。 「3つともおんなじヤツだったんですって!袋まで!!」
あーーーーー。 「上司が入院したら、お見舞いに平癒祈願のお守りを贈るもの」というオトナ常識を私は初めて知った。 このトシになっても、知らないことはたくさんある。
自分が困っていなくても、アプローチするべき場面はあるのだ。 それがわからないことと、休憩室の話題に困るのと、根っこは同じなんだろう。そこまではわかるのだか。