ダークホース

オシメ様の式部ごのみを決定づけたのは、マルタ君という他クラスの男子だ。これまでオシメ様がカッコいいと騒ぐ男子について、友人たちから同意を得られたことがない。マルタ君だって、「あたしからすれば、ただの”式部”やわ」とエターナルちゃんに言われたことから「式部ごのみ」という概念が生まれた。 そのマルタ君と遊びに行くと言われ、ああそう、と大して気にも留めていなかった。昼過ぎに待ち合わせて、清水寺に行ったあと、近くの抹茶喫茶でお茶をするプランだという。

だから夕食の話題はこのことがメインで、どやった、楽しかった?と聞けば、楽しかったと話し出す。清水寺は外国人だらけだったし、抹茶喫茶の看板メニューは話題になっているほどおいしくはなかった。八坂神社と円山公園知恩院にも行った。知恩院には人がおらず、大きな畳の部屋が気に入った。円山公園には坂本龍馬中岡慎太郎銅像があった。マルタ君は歴史オタらしい。

そして夕食後、一緒にお風呂に入っていると「さっきは父ちゃんがいたから言わなかったけど」と切り出した。「つきあうことになった」と。もうみんなに報告しまくったー!と満足気だ。

おおお、急展開。マルタ君のどこが好きなんと問えば、顔!と即答。軽い。友人たちから「ただの式部」と言われるマルタ君の顔はいったいどんなものなのか、想像もつかない。つきあうことになったという自分の報告をする同じ流れで、○○君は彼女とつきあい始めてもう1年になる、長いねぇと別の友人について感嘆する。1年が長いの?と聞けば、高校生のつきあいなんて長くて3ヶ月だよーと答える。じゃあ、マルタ君が変なストーカーにならないようにきれいに別れてね、と言えば、なんで別れる前提なん? と怒られた。長くて3ヶ月だと言ったばかりなのに! なんとも軽い。オシメ様たち現代の高校生にとって、彼氏彼女とは「運命の相手」なのか「他の人よりもちょっと仲のいい異性」なのか。

しかしまあ。ケサラン君とパサラン君のどっちかだと思っていたら、ダークホース。いずれにしても、健全な男女交際を望みます。