また儀式

11月下旬になっても暖かい日が続き、紅葉はなかなか進まない。大晦日を除けば、12月の京都はいったん観光客が落ち着くオフシーズンという印象があったのだが、今年はインバウンド客の復活に加え、紅葉の見ごろを計りかねた観光客がいつまでもだらだらと訪れ続けている。とはいえ、さすがにクリスマスとなると「古都」の気分とは違うのか、八坂神社の周辺はここ最近訪れた中で最も人が少ないように思えた。入ってすぐの手水舎は水をたたえ、柄杓も据え付けられていた。しかし、硬貨が投げ入れられているのを見たのは初めてだ。手水舎の何たるかを知らずに訪れる人が増えたのだろうか。社の清掃の手が回っていないのだろうか。観光地で水のある場所はなべてトレビの泉化するようだ。こんな水で清めになるのかと思いつつ、形だけ手指を濡らす。いつもは数軒の出店が出ているのだが、今日はひとつもない。来る初詣シーズンに備えて今はパワーを温存しているのかもしれない。

本殿の前には数人がたたずんでいたが、いずれも「この太い紐はどうするんだ?」というような顔で困ったように鈴を見上げている。そういうものなのかなぁと思いつつ、五円玉を投げ入れ、空いている鈴の緒をゆさゆさゆすぶって鈴を鳴らし、柏手を打つ。神様、スサノオ様、お久しぶりです。来ました。

オシメ様が合格しました。いろいろありましたが、見守ってくださってありがとうございます。これからもがんばります。どうか、無事に、元気に大学生活を過ごせますように。がんばりますので、どうか。もっと早く来たかったんですが、すいません。本当にありがとうございました。これからも見守ってください。よろしくお願いします。

軽く一礼して本殿を去る。階段のところに着物姿の小さな女の子と母親がいた。母親は一生懸命子どもの写真を撮っている。七五三にしては遅いなと思いながら通り過ぎたら、外国人だった。正面の信号を待っている間、そばにいた2人連れの外国人男性が大声で話をしている。喧嘩をしているわけではないのだが、熱心にまくし立てている。なまった英語のようにも他の言葉のようにも聞こえたが、どうでもよくなって青になった横断歩道を渡った。駅に向かって歩いているうちに暑くなってきてストールを取った。

試験前、オトノ様に「また行くの?」と聞かれたが、実は合格祈願に行くつもりは毛頭なかった。オシメ様のマレーシア行き、オーストラリア行きの時には行ったのに? とオトノ様は意外そうだったが、私の中ではつじつまが合っている。

今回は来てしまった。そしてまた来るんだろう。何かあるたびに、何もないようにと。